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名古屋高等裁判所 昭和37年(く)23号 決定 1962年8月30日

少年 U(昭一九・八・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年の提出にかかる抗告申立書に記載するとおりであるから、ここに、これを引用する。

所論は、少年は、鑑別所、少年院に収容されるのは、今回が最初である、少年は、暴力団体浅野会に入会していたことはない、また少年は、本件傷害の被害者を棒で殴つた覚えはなく、棒で殴つたのは共犯者のKであり、少年は、右Kが恐ろしいので同人の暴行を制止しなかつたに過ぎない、少年は、自己の非行について心から反省しており、少年の両親も、少年を家庭に引き取り、その保護のもとに、少年を職に就かせようと用意している。以上の次第であるから、原審の少年を特別少年院に送致する旨の保護処分決定には、重大な事実の誤認があり、かつ、該処分は著しく不当である、というのである。

所論に徴し、本件記録(少年調査記録を含む)を検討してみるのに、少年の本件非行事実は、所論の傷害一件のほか、恐喝が六件もあること、右傷害の非行は、少年が原決定表示のKと共謀のうえ、被害者に対し、少年は竹製の、右Kは木製の各清帰用土間拭き(少年が、棒又は竹と称するもの)を以つて、交々数回にわたつてその頭部等を強打したものであつて、(このことは、少年自身も司法警察員の取り調べの際に自白しているばかりでなく、Kの司法警察官に対する供述調書、村松捷彦、中神巖、今泉利男、伊藤音吉の各司法巡査に対する供述調書謄本の各供述記載により明認しうるところである)、少年が右非行の共同実行者であることは明白であり、共犯者Kを恐れたがため、同人の暴行を制止しなかつたに過ぎないとの所論は、単なる弁解に過ぎないと認められること、右傷害は、前示のように、竹又は木製の清掃用土間拭きで、身体の重要部分である被害者の頭部等を殴打するという粗暴極まるものであり、これにより被害者をその場に昏倒させ、加療一ヵ月を要する頭蓋内出血、前額部挫創等の重傷を負わせるに至つたものであるが、少年の右非行の動機たるや、原決定記載のように、まことに些細なことからであり、このことは少年の平素の暴力的生活態度の表現として、少年の処分に当り、充分考慮しなければならないこと本件各恐喝の非行は、少年が昭和三六年一二月より昭和三七年六月までの約半年の間に、単独又は外一名ないし二名の仲間と共謀のうえ、前後六回にわたり通行人等から、所持金、腕時計等を喝取し、ことごとくこれを遊興費に費消していたものであり、共謀にかかるものについては、少年が主犯的立場にあり、常習的傾向を帯びようとしていることが窺われること、少年は、勤労の意欲に欠け、職を転々と変えた挙句、不良仲間と交わつて無断外泊をなし、豊橋市内名古屋市内等の安宿を泊りあるき、パチンコにより生活費を稼ぐという不健全な生活を送つていたものであり、その間不良交友及び遊興癖は相当進んでいるものと認められること、少年が所論の暴力団浅野会に正式に入会したものであるかどうかの点については、完全に入会していた旨の中川警察署長の回答書があるが、(記録三二丁)少年は、司法警察員の取調に際し、右浅野会の輩下に属するSから、同会のバツヂを、パチンコ店等で顔を利かせるために、貰つたと述べているのに過ぎず、正式に右暴力団の輩下となつたかどうかは、必ずしも明らかではないが、所論のとおり入会していなかつたとしても、少くとも右浅野会の輩下の者と交際し、そのバッヂをつけて、いわゆる顔を利かせていたものであることは明らかであること、少年には窃盗の非行歴もあること(原裁判所に窃盗保護事件として係属したが、少年の所在不明により昭和三六年一二月一五日審判不開始決定)、少年の両親は健在であり、未だ少年に対する保護の意欲は失つていないが、父は頑固一徹で少年の心理を理解する能力に欠け、母はあまいばかりで少年を善導する能力はなく、少年もかかる両親に反感を抱き、殊に、父とは、一口も話合わぬといつた有様であつて、少年の保護環境も良好とは認め難いこと、その他本件記録に顕われた一切の事情を勘案すれば、原審の保護処分決定は、充分に首肯し得るのであつて、所論のうち、少年が心から反省しているとの点は、前認定のような少年の性格、行状等に照らし、にわかに信用し難いものがあり、少年が未だ収容歴のないこと、少年の両親が少年を家庭に引き取り、仕事に就かせるべく準備していること等少年に利益な事情を参酌してみても、該処分が著しく不当であるということはできない。なお原決定中、傷害の事実認定について重大な誤認があるとの論旨についても、その理由のないことは、既に説示したところより、明白である。

よつて、本件抗告は、その理由がないので、少年法三三条一項に則り、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 影山正雄 判事 村上悦雄 裁判官 谷口正孝は転任のため暑名押印できない 判事 影山正雄)

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